ガラス工芸の魅力
染織、金工、木工、玉石工芸など、人間の手が作り出してゆくさまざまな工芸ジャンルの中で、ガラス工芸だけが、天然に存在しないガラスという人口の材料を使う工芸です。この素材の特殊性のため、ガラス工芸は独自の歴史をもち、またその独得の美を作り出しています。ガラス工芸では、器やものを作る以前にまず、素材になるガラスをつくり出さねばなりません。一般にガラスは、珪砂と石灰とソーダー灰(或は炭酸カリウム)と定量的に調合し、ある温度で溶解することによってつくられます。その製法と原料の混合率は、すでに紀元前18世紀の
メソポタピアの粘土板に秘伝として記されており、驚いたことに今でもほとんど変わっていません。ガラスの原料は、珪砂が地球上の土や砂や岩石の主成分であるのをはじめ、土や木も、地球上のあらゆるものが原料になるといってもいいほど無尽蔵に産するのです。長い歴史を通じてガラス工芸が時と場所を選ばずにその可能性を試みてきたのはそのためです。ガラスこそ青銅についで人工の工芸材料として真に画期的なものといえるでしょう。その光沢の美しさはもちろん、鉱物を材料に混ぜ入れることによって自由に着色することができるし(色ガラス)、また、1種のにかわ状物質であるために、思うままの形態を製作できることで他の工芸材料をしのいでいます。
しかし、美術品にしろ、装飾品や実用品にしろ、工芸品としてのガラスの魅力はなんといってもその透明性にあります。くだものを盛るにせよ、酒をくむにせよ、その内容物の美しさをそのまま生かしうるものはガラス容器をおいて他にありません。透過光や反射光など、光の性質や射し込む角度によりさまざまにそれらを屈折させ、千差万化の色彩と輝きを見せるガラスは、アール・ヌーボ以来、近年ますます美術品としても貴重な素材となっています。
メソポタミア粘土板文章(大英国博物館蔵)
このブログを作成するにあたり以下の文献を参考にさせて頂いております。
古代ガラスの技と美(古代オリエント博物館・岡山市立オリエント美術館)-山川出版社
- ガラスと文化(由水常雄)-NHK出版
- ガラス-平凡社
- 世界ガラス工芸史 カラー版(中山公男)-美術出版社
どちらの書物も非常にわかりやすく解説してあります。ブログ掲載文は、ほんのかいつまんで書いただけですので更に歴史を学びたい向上心のある方は書店にてお買い求めください。